要介護者を介護するために離職する「介護離職」は、近年大きな問題になっています。仕事と介護の両立に悩むと、「仕事を辞めて介護に専念すべきなのでは」と考えるかたもいるかもしれませんが、介護離職によるリスクも少なくありません。国や自治体、民間などのサービスを知り、利用を検討してみましょう。
ここでは、介護離職の現状と離職を防ぐために活用したい制度、サービスについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
介護と仕事を両立することは難しいのか
介護と仕事とを両立させたいと考えつつも、実際に介護を始めてみると、その難しさを実感せざるをえないといった声が上がります。介護は、その期限を区切ることができず、介護のレベルによっては、仕事との両立が難しいケースも少なくありません。
総務省統計局の「平成29年就業構造基本調査」によると、介護をしている正規雇用者のうち、最も割合の高い介護日数は男性で「月に3日以内」、女性で「週に6日以上」です。これだけの日数を介護にあてつつ仕事と両立させるのは非常に難しいことですが、介護者をサポートするためのさまざまな支援制度も存在します。
参考:平成29年就業構造基本調査 結果の概要│総務省
増加傾向にある介護離職者の数
平成29年の「就業構造基本調査」(総務省統計局)によると、平成28年10月から平成29年9月の1年間で、介護・看護を理由に前職を離職した人の数は、9万9000人に上りました。このうち、男性が2万4000人、女性が7万5000人で、女性の占める割合が多くなっています。
平成24年の前回調査と比べると、介護離職者の数はほぼ横ばいを続けていますが、女性の介護者はほぼすべての年齢階級で上昇しており、「40歳未満」および「40~49歳」で特に大きく上昇しました。
参考:平成29年就業構造基本調査 結果の概要│総務省
介護離職後の実態
負担を減らそうと介護離職したにもかかわらず、実は、かえって負担が増大したという方もいます。収入がなくなると、長期にわたる介護生活を支えるための貯蓄はどんどん減っていきます。また、社会的接点が希薄になり人との交流が少なくなった、介護で頑張りすぎて自分が身体を壊したという介護者も少なくありません。
さらに、介護離職後の再就職が非常に難しいという現実もあります。
介護離職を避けるための準備と方法
介護離職を避けるために行っておくべき準備や選択すべき方法について、詳しく解説します。
支援制度の活用
まずは、介護休業制度や介護給付金など、仕事と介護を両立させたい介護者をサポートするための支援制度について解説します。
介護休業制度
要介護状態にある家族を介護するため、就労した状態で一定の期間休業できる制度を「介護休業制度」といいます。介護休業制度は、育児や介護と仕事を両立させる目的で作られた「育児・介護休業法」によって定められたものです。
介護のために休業する権利や、時間外労働・深夜労働の制限、勤務時間の短縮や転勤などへの配慮、不利益な取り扱いの禁止なども、この法律によって定められています。従業者が介護休業を申し出た場合、事業主はその申し出を拒否できません。
介護給付金
「介護休業給付金」は、常時介護を必要とする家族のために2週間以上の期間を休業し、給与が著しく低下した従業員に対して支払われるものです。雇用保険の被保険者が、その祖父母や配偶者、子、被保険者の配偶者の祖父母などを介護する際に対象となります。
ただし、介護休業を開始する以前の2年間で、基本給が11日以上支給された月が12ヵ月以上あることが要件です。離職して雇用保険で基本手当の受給資格を得た場合は、その後の期間が該当します。
サービスや施設を活用して解決してみる
訪問介護・通所介護・地域包括支援センターなど、介護者をサポートするためのサービスや施設などを活用する方法について解説します。
訪問介護や通所介護について
ホームヘルパーや介護福祉士が要介護者の自宅を訪れ、日常生活の援助を行うことを、訪問介護といいます。サービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があります。訪問介護によって、洗濯・掃除・買い物・調理といった日常生活を送るための生活援助と、食事・服薬・排泄介助・入浴介助などの身体介護を受けることができ、介護者の負担軽減につながります。
さらに、日帰りで食事や入浴、レクリエーションなどの介護サービスを介護保険で受けられるのが、通所介護(デイサービス)です。ほとんどの場合、自宅までの送迎を施設職員が行ってくれます。
役所や地域包括支援センターを活用する
介護サービス、介護事業者とのトラブルなどを相談したい場合、窓口になるのが、役所や保健所、社会福祉協議会、地域包括支援センターなどです。地域包括支援センターは、65歳以上の高齢者やその支援活動にかかわる人のための施設で、高齢者の自立した生活の支援、介護予防ケアプランの作成などを担っています。
栄養改善や口腔機能の向上など、さまざまな側面から専門家の意見を聞き、より適切な方法を選択することができるため、介護者・被介護者の精神的な負担軽減につながります。
ケアマネジャーに相談
介護保険サービスを導入するため、要介護認定の申請を行うと、被介護者ごとに担当するケアマネジャーがつきます。介護ケアプランなどの作成がケアマネジャーの基本的な業務ですが、介護者が介護と仕事の両立や就業状況などに悩んでいる場合にも、ケアマネジャーの力を借りてみましょう。
仕事と両立できるケアプランの作成や介護休業へのアドバイスなど、家族への支援についても相談をすることで、具体的な対策をねることができます。
老人ホームや介護施設の検討
自宅での介護が難しい場合は、24時間365日サポートのある老人ホームや介護施設の利用を検討してみましょう。何かあったときに医療の知識がある人のサポートをすぐにうけられるのは心強く感じることでしょう。
企業が講じる独自の支援制度
企業によっては、独自の支援制度を設け、介護離職を防止している企業もあります。勤務時間の短縮やフレックスタイム制度を導入していたり、時間外労働や深夜業を制限するなど、介護と仕事の両立を目指す社員が働きやすい環境づくりを行っている企業も増えてきました。
無理のないかたちで働けるよう、自分の勤める会社にどのような制度があり、どう活用できるか、どのように申請すべきなのかなどを調べておくようにしましょう。
仕事先に相談することも大事
介護のために仕事を休んだり、労働時間の短縮をお願いすることに気兼ねしてしまう人が少なくありません。こうしたケースでは、介護と仕事との板挟みになり、ひとりで悩みを抱え込んでしまった挙句、介護も仕事も満足に行えないといった状況にも陥りかねません。介護と仕事を両立するための解決策を家族だけで見つけられない場合は、なるべく早急に職場の上司や人事に相談することが大切です。
早めに相談し、理解を得ておくことで、介護休暇を取得する、勤務時間を短縮するなど、勤務体系を変えるといった解決法が見つかる可能性もあります。ひとりで悩まず相談し、協力を仰ぐことで、心の負担もはるかに軽くなります。
まとめ
介護離職が大きな社会問題となっている中、離職せずに家族を介護できる方法として、介護休業制度や地域包括支援センターの利用などについて解説しました。ひとりで抱え込まず周りを相談をしながらさまざまな制度も活用しましょう。
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